「あいつは、なっちゃんの保護者かなんか?」



走ってく匠の後ろ姿を見ながら、可笑しそうに笑っている。



「なんだろうね、板についちゃったのかも」



恋人の振りをしているなんて言えなくて、笑って誤魔化す。



「なっちゃんとこうしてゆっくり話すのは久しぶりだよね」


「そうだね」



野球部のグラウンドまで、2人で並んで歩く。
こんな日は来ることがないと思っていた。



「なっちゃんは、1人でこっち戻ってきたんだって?」


「うん。こっちの高校に行きたくて」



柊くんと同じ高校に入りたかったからなんで、言えないけど。
夢見ていた、この空間に心は跳ねる。




「すごいね、あんまり知り合いいないのに」


「柊くんがいるから.......」


「え?」


「あ、いや。柊くんと匠という心強い味方がいるから来れたんだよ」



危うく、そのまま言ってしまうところだった。



「そっか、そんなふうに思ってくれてたなんて、嬉しいな」



柊くんは、表情に気持ちが出やすい。
本当に嬉しいという顔をしているのがよくわかる。