「夏実ーって、何してんの?」



トイレに行くと行ったっきり、混んでいたのか戻ってきていなかったこころちゃんが走ってきた。



「こころちゃん……」


「だれ、この子」



あたしと彼女の間に立ってくれる。



「あたしは……「って、原木さんじゃん」


「あ……桐生さん」



柊くんと同じ中学のはずだから、こころちゃんとも顔見知りというわけだ。



「なに?柊のことでなんかあった?」



彼女の存在を知り、一瞬で何が起きているかを把握したらしいこころちゃんが、あたしに目配せをする。
「安心しろ」ってことだろう。



「この子に柊くんが声をかけていたから……」


「は?声くらいいいでしょ?幼なじみなんだし」


「でも、この子は柊から言い寄ってきたって……「いや、そんなこと一言も……」



あたしが声をかけていないのは、たしかだし、嘘はついていない。
なのに、どうしてこうも話が飛躍してしまっているのだろうか。



「あのさー、夏実には匠っていうれきっとした彼氏がいるの。雰囲気見て気づかない?あんたの彼氏のことはこれっぽっちも思ってないよ?」



ハキハキとした性格のこころちゃんがドーンと言ってくれる。