「ごめん、夏実。先走った」



あたしの両肩を掴む。



「先走った?」


「お前の気持ちはまだ柊にあんのわかったんのに。先走った」


「……っ」



なんで、そんなことを言うの。
匠の言葉にぼぼぼっと自分の頬が赤く染まっていくのがわかる。



「でも、これで俺のことは意識してくれたんだよな?」



フッと笑って、あたしの顔をのぞき込む。



「意識……しないなんて無理でしょ」


「意識してくれりゃそれでいい。俺なんて、昔から意識しっぱなしだ」


「匠……」



匠は、あたしのことが好きだと言っているんだよね。
昔からずっと、気づけばそばにいてくれた。
柊くんが引っ越して来るよりもまえから同じマンションにいて。
赤ちゃんの頃から一緒に写っているのは匠だった。

3歳になって、柊くんも一緒に写ってる写真が増えて、引っ越して来たのはこの頃だって言ってた。

そして、あたしが恋をしたのも。

初恋をずっと引きずって、告白だってされたことはあったけど、柊くん以外なんて無理で。

でも、いま柊くん以外の人に初めて目が向いている。