無理やりにでも柊くんのことで頭にいっぱいにしたくて、柊くんのことを考えたのに、落ち込んでしまうなんて墓穴。



「……柊くん」



机の上に飾られた、幼い頃の自分と両隣にいる柊くんと匠。
柊くんとのツーショットもその横においてある。

柊くんとのツーショットなんて、この1枚しかなくて。
転校してから、もっと撮っておけばよかったななんて、ガッカリして。

こっちに戻ってきたから、たくさんまた撮ればいいなんて思っていたのに、来た途端に失恋。

話せたのは、この前の集合ポストの前の一度だけ。



〝夏実、ごめん。顔見せて?〟
ピコンとなったスマホに表示された、通知の文字。

LINEを開くと、ペコペコと頭を下げて謝る犬のスタンプ。



「……ぷっ」



犬のスタンプがあまりに可愛くて、匠に似合わないなと思って笑いがこみ上げる。



「あんな可愛いの似合わないよ」



ドアを開けて、そう告げれば、しゅんとした表情からぱぁっと笑顔になる匠。

いつから、そんな可愛い顔なんてするようになったのよ。
とびっきりの笑顔なんかあたしに見せないでよ。