「おい、夏実!いるんだろ?」



ガチャっと乱暴にドアを開けた音がした次は、あたしの部屋のドアを乱暴に叩いてる。

いるよ、いるけどさ。
部屋の中のあたしは、制服を着たままベッドにダイブしてる。


なんで、同じ家に住んでいるんだろう。
意識しないなんて、そんなの無理で。
同じ家で顔を合わせて普通でいられる自信なんてない。

どうして、キスなんか……
そう思うと同時に、触れられた感触を思い出しては赤面してる。

匠の顔が見たくないほど、嫌だったわけじゃない。
嫌だなんて、思わなかった。
不思議なほどに。

だからこそだ。
あたしは、柊くんのことが昔から大好きなはずなのに。
柊くんのファースキスをずっと夢見ていたはずなのに。
いま、頭にずっとあるのは、匠ばかりで。
匠とキスをまたしたい、なんて思っている自分がいて。
そんな自分が嫌で嫌で仕方ない。

さっきのことを思い出すだけで、熱くなっていく体。
恋愛偏差値がマイナスすぎるあたしには少し、レベルが高かっただけだと自分に言い聞かせる。

そして、柊くんも彼女とこうしてるのかなって考えてまた落ち込んだりもする。