「いんだよ、お前に誕生日おめでとうって言って貰えた」


「いや、それは本当の言葉じゃないし……」



全然心のこもってない言葉なのに。
どうして、そんな言葉で喜んでくれるんだろう。



「夢だった、お前に誕生日祝ってもらうの」


「……え?」



なに、その表情。
なに、ずっと好きだったみたいな表情してんのよ。
やめてよ、照れちゃう。



「部活帰りに迎えにきてもらって、そのままデートして、誕生日おめでとうって言われんの。いつも夢見てた」


「……っ」



そんなふうに言われたら、何も言えなくなる。
やめて欲しい。
あたしの心を惑わすの。

普段、いいだけ俺様なくせに、なんでそんな甘いこと言うの。
いつものエラソーな態度はどこにいったのよ。
ほんとうに調子狂う。



「お前だって、俺のこと好きなくせに」


「はぁ……?」



お前だってって、誰と同じ気持ちだっていうの。
あたしは、柊くんのことが好きなんだよ。



「分かるまで、仕方ないから待ってやるから」



そのまま、匠の腕の中にすっぽりとおさまった。

ドキドキしすぎて、どうにかなるかと思った、匠の誕生日。
あたしは、ひたすら、柊くんのことを考えようとした。
でも、寝る時もいつでも、頭の中には今日の匠のことばかりがあった。