「こ、これを渡したくて……」


「なに、これ」



匠が彼女をみる瞳はあくまでも冷たい。

匠はいつだって、優しくなんかないが、あたしやこころちゃんをみるときは優しい顔はしている。



「今日、誕生日でしょ。だから……「え!?」



彼女の言葉を遮って叫んでしまったあたし。



「あ、ごめんなさい……」



あまりにもビックリして、途中で叫んでしまった。



「悪いけど、こいつ以外から貰う気ねぇから」



あたしの手を引っ張って、そのままマンションの中へと入っていく。



「ちょ、プレゼントくらいもらってあげたら?」


「いらねぇ。絶対いらねぇ……竜崎からとか絶対いらねぇ」



匠は異常に竜崎さんを嫌がっているようにみえた。

でも、いまは、そんなことより……。



「ちょっと、匠!誕生日ならそう言ってよ!」


「自分から言いたくねぇだろ」


「だからって……ホールケーキ食べたのはそういう理由なら言ってよね。もっとちゃんとお祝いしたのに」



理由が必要だからじゃなくて、本当に誕生日だったなんて。