バイキングにきたはずなのに、そのケーキと飲み物だけで終わった。



「はー、腹きつい」


「あのケーキだけでお腹いっぱいだね。バイキングの意味ないじゃーん」



とはいいつつも、匠と一緒に食べたケーキは美味しかったし、匠といるのも楽しかったからあたしは満足してる。



「でも、うまかったろ?」


「うん。めっちゃおいしかった」



だから別に他のケーキが食べれなかったことに文句なんかない。



「あれ、マンションの前にいるのって、同じクラスの子じゃない?」



マンションのドアの前に立つ1人の女の子には見覚えがあった。



「あー、竜崎だ」



匠はその子のことを知ってるらしく、あたしの手をぎゅっと突然握る。



「ちょ、どうしたの?」


「彼女のフリすんだろ」


「あー、そっか……」



あの子がここに来ているということは、匠に会いに来た可能性もゼロではない。



「竜崎、なにやってんの?」



その声に、ドアの前で立っていた彼女が顔をあげる。

匠の顔をみてぱあっと明るい顔になったが、横にいるあたしを見て、一瞬にしてその笑顔は消える。