「じゃあお願いします」



なぜか、それに同意する匠。
ホールケーキを頼むことに理由でも欲しかったのだろうか。



「えっと、何本にしますか?もしくは、年齢の数字のローソクもありますよ」


「じゃあ、16で」


「かしこましました」



たしかにあたし達は今年16さいになる。
わざわざそこまで演ずる必要はあるのだろうか。
まぁ、頼むことに理由をつけたいならそれに乗じてやろう。



「わざわざホールケーキ頼む理由つけたいなら、頼まなきゃいいのに」


「いいだろ、別に。お前と食べたかったんだから」


「ま、相手してあげる」



そこまでしてなぜ、ここのホールケーキが食べたいのかよくわからないけど。
でも、もしかしたらすごく美味しいのかもしれない。



「ほら、匠誕生日おめでとう」



なんて、彼の考えた理由に乗ったりして、ケーキに立てられた、16という数字のローソクの火を消させたりして。

そして食べたホールケーキは確かに美味しかった。

当然、ふたりでホールケーキなんて、多くて食べきれなくて。