「はぁ、ありがとう。匠」


「あいつ、絶対分かってんだよ……」



はぁっと溜息をつく。



「わかってる?」


「夏実が柊の幼なじみだってこと」


「……え?」



そんなふうには見えなかった。
それなら、なぜあんなふうに話しかけてきたりするのだろうか。



「絶対、なんか企んでる。あいつはそういう女だ」


「えぇ……」


「騙されんなよ」



ポンっとあたしの頭を撫でる。



「人はわかんないなぁ……」


「お前、騙されそうだから気をつけろよ。なんかあったら俺に言え」


「うん……」



ふと、見上げた先にある匠の横顔は、綺麗な顔をしていてなぜだかきゅうっと胸が締め付けられるきがした。

匠はどうして、こんなにあたしの味方でいてくれるのだろう。
幼なじみとしての、そして、いま同居しているものとしての責任でもあるのだろうか。

ありがたいと思うと同時に、こんなふうにされると、守られてると実感してくすぐったい。



「さて、並ぶぞ」



匠が指さした先にはなにやら長蛇の列。