「詩音、匠。おかえり!」



家に着くと、先に帰ってきていた夏実と柊くんが出迎えてくれた。



「なんだ、柊も来てたんだ」


「当たり前じゃん。なっちゃんとなるべく一緒にいたいんだから」



柊くんは、あたしが知らない人のように甘い言葉をたくさん言っている。

匠は、あたしとふたりのときこそ、甘くなるけど、人前ではあまり甘くはならない。



「へーへー。お熱いことで。野球ちゃんとやってくれれば俺はなんも言わねーよ」



そのままふたりの横を通り過ぎて、あたしの部屋へとあたしを連れて入っていく。



「匠、いいの?ふたり.......」


「あいつらもふたりでいたいだろ。俺もふたりがいい」



ぎゅっと抱きしめて、そしてまたチュッと口付けをしてくれる。



「ずっと俺のものにはなりえないって思ってたからかな。すげぇ、ずっと離れたくなくて困る」



困るなんて言いながら、全然困った顔なんかしていない。



「そういや、夏実は結局うち高校には行かないんだってな」


「うん、いまの学校で卒業するんだって。柊くんは、不満気だったけどね」



家族で話あった結果、夏実はいまの学校が自分への理解もあるし、友達もいるし、最後までいたいって結論にいたった。



「詩音ー、匠ー!写真とろうよ!」



ばんっとドアをあけて、夏実が入ってくる。



「いまのみんなの写真、飾りたい。あの頃と何も変わってないよ」



あたしの部屋の机にあるあの頃の写真。

夏実の言葉に、あたしのスマホでカシャッと4人で写真にうつる。



「いつか、一緒に結婚式だね」



夏実とふたり、顔を合わせて微笑み合う。

お互いがお互いの好きな人と幸せになること。
それがいまのあたしたちの夢なんだ。

その夢がいつかかなうまで、あたしたちはあゆみ続ける。


-Fin-