正直、誰のことも責めることなく、受け入れている夏実にはビックリしてる。

事故にあって、足が不自由になって、それだけじゃなく施設に入れられて。



「俺、ちょっと行ってくる!」



俺がすべきことはただひとつ。

夏実と柊を会わせることだ。

そうだ、夏実は俺らのことを忘れていたけど柊のことだけは忘れていなかったんだ。
柊のことだけは、演技でも忘れたくなかった。
それだけ、柊のことが好きだってことだろ。

柊だってそうだ。
夏実のことを目にした瞬間、詩音のことをなっちゃんと呼べなくなるくらい、夏実のことが大好きなんだ。

そんなふたりを会わせないなんて、ありえないんだ。



──ピンポーン



柊の家のチャイムを鳴らすと、『はい?』という柊の声がきこえてくる。

下のオートロックからのチャイムじゃないことで、大体は誰がきたか見当ついてんだろう。



「俺」


「匠、オレオレ詐欺じゃないんだから」



くすくすと笑ってすぐに匠が出てくる。


甲子園のとき、動揺していた柊ではなさそうで安心する。