「お前が本当は夏実なんだよ.......って言ってもわかんねぇか」



どうやって説明するべきなのか、わからず頭をかく。



「分かってるよ」



夏実がニコッと笑う。



「.......へ?」



さっき、夏実が返してきた言葉と同じ言葉を返してしまう。



「あたし、記憶なんてなくなってないよ?」


「.......え?」


「影響があったのは、足だけ。記憶はそのまんま。でも、詩音になってたから、詩音を演じていただけだよ」


「マジかよ.......」



想像もしていなかった。
だって、それにしては演技がうますぎだろ。

俺に再会した頃の夏実は、俺のことを初めて会ったように振舞ったんだ。



「じゃあ.......」



潤んだ目で夏実のことを見るおじさん。



「お父さんのことも、もちろん覚えてるよ」


「夏実、すまない!」



おじさんが夏実のことを抱きしめる。



「さっき、駅にお父さんが迎えにきたときに、もしかして本当の話をされるのかなって思ったけど、ちがったら困るし、一応よそよそしくしといんたんだけど.......よかった、ちゃんと話せて」