「あ、いたいた。匠」



そこへ、車椅子を転がしながら詩音がやってきた。



「詩音?どうしたんだ?」


「知らない人の家の中にいるのは、なんか落ち着かなくて.......探しにきちゃった.......ごめんね?」



夏実のことが気になるのだろう。
顔を覗き込んで、謝る。



「匠、一緒に帰ってあげて。あたしはもう少し外の空気吸ってくから」


「お前を1人になんてしたくない」


「何言ってんの、今更でしょ」



そのまま、俺のことを見ることなく夏実が歩いていこうとする。

夏実のことを傷つけていたつもりはないのに、詩音の足のこととか気にして、それを夏実を傷つける要因になっていたなんて気が付かなかった。



「待てよ!」



そのまんまになんてしていられなくて、夏実のことを追いかけて、ぎゅっと抱きしめる。



「ごめん、詩音。俺、夏実と少しふたりでいたいから、悪いけど先に帰っててくれる?」


「え、あ、うん!ごめんね、邪魔して!」



俺が夏実のことをだきしめたのをみて、顔を赤くした詩音がそのままマンションの方へと引き返していく。