「.......夏実」



自分の母親が自分のことを本当は溺愛していなかった。
そう聞いた、夏実は涙を流してそのまま、家を飛び出した。



「あの子のこと、迎えに行きなよ」


「おじさんに任せた」


「いいよ、来なくて」



追いかけた俺に対して、泣きはらした顔をみせる夏実。



「ほっとけるかよ、俺はお前が大事なんだよ」


「ずっとあの子のことが大事だったくせに。何言ってんの.......」


「あれは、大事とかそーいうじゃねぇよ」



いつだって、昔から俺にとって大事な女は1人だけだ。



「いつもあたしのこと、置いていくじゃん。あたしなんか見えなくなるくせに.......なんだかんだいって、あの子のことが好きなんだよ。匠は」


「ちげーよ、俺が好きなのは「言わないで。もう、あたし自分が誰だかも分からないから」



もう一度告げようとした言葉は、夏実の手によってしまわれた。



「俺がお前の存在認めてやるから。俺にとってお前はお前だから」


「そんなの認めてくれなくてもいいよ」



心を閉ざしてしまった夏実の心にはどの言葉も入っていかない。