夏実と同じように自分のことを詩音だと思い込んでいて。

でも、夏実と違うのは.......。



「柊くんのこと、ずっと好き」



柊への思いをずっと抱えているところ。



「柊は、連れてこれないけど、俺、たまにくるから.......」



柊にはこの時、すでに彼女がいて。
その彼女が、結構面倒なやつだったから、柊には言わないほうがいいと俺が判断した。

詩音とはそれから月に1度は会っていた。
別に詩音に特別な感情がわいたことはない。
詩音も俺には特別な感情がない。

だからかな、一緒にいても楽だった。



「匠、夏実が好きな男追ってこっちの高校受かったらしいぞ」



兄貴から聞いた夏実の話。

母さんが、ひとり暮らしだから誰がルームシェアでもしてくれたら安心だって話に俺は、秒で食いついた。



「あんた、夏実ちゃんのこと好きでしょ。そんなのダメに決まって「なんもしねぇから、夏実だって、俺のほうが安心だよ。柊だと好きな男だから困んじゃん」



なんもしねぇ自信なんてなかったけど。

でも、俺が傍にいたかったから。

だから、俺は、あの日ドキドキしながら、夏実って呼ぶ練習をしながら、夏実が来るのを待った。