「お母さんが、夏実を溺愛してるのは知っているよな?」


「うん」



夏実と詩音。
ふたりは、本当の双子の姉妹ではない。
ふたりとも施設育ちで養子縁組して、この家にいる。

そして、明るく誰とでも仲良くでき、成績もいい夏実のことをおばさんは溺愛をしていた。



「ねぇ、おじさんなっちゃんはどこにいったの?」


「もう、ここにはいない」


「.......え?」



おじさんの言葉に、俺も匠も言葉がでなかった。



「夏実は、車椅子を余儀なくされてしまってね。それをお母さんが受け入れられなくなってしまって.......詩音のことを夏実だと信じているんだ。だから、俺もお母さんに話を合わせることにしたんだよ」



お前らもそう思ってくれというような目だった。



「なっちゃんは、いったいどこに!?」


「夏実なら、あそこの病室にいるじゃないか。頼むから、これ以上お母さんの心を乱さないで欲しいんだ」



俺らに対して、頭を下げるおじさんに俺たちふたりはなにもいうことはできなかった。