ただ、悲しかった。
ワガママだってわかってるけど、悲しかった。
それだけは、変えられない事実だから。



「匠が何を隠してるのか、何を抱えているのかは分からない。でも、あの子にはあたしのことを話していて、あたしにはなにも聞かされてないのは.......案外あたしって匠と大した関係じゃなかったんだなって」



あたしにも、同じようにその日あったこととから話して欲しかった。
あとから思えば、部活が休みなのにどこに行くのかも言わず出かけることが度々あった。
それはきっと、彼女に会いにいっていたのだと今ならわかる。



「それは違う!」


「何が?そんな言い訳なんてされても.......あの子がいるとあたしよりもあの子を優先するのは変わらないよ」



こんなのただのヤキモチで。
匠に言ってもどうしようもないのに。



「.......それは、ただあいつの体が.......」


「うん。わかってる。でも、あの子が来ると自分がそこに居ないように扱われるの結構キツいんだよ」



別に、あの子のこと心配なのは構わない。
でも、どうしてか匠と柊くんの世界からその瞬間あたしが消え去るの。