「えー、いいじゃん。ね?匠、幼なじみのこなんでしょ?」


「そうだけど、悪いかよ」



諦めたようにため息をついて、答える。



「また、こころと匠くんイチャついてる」


「あの二人、本当に付き合ってないの?」


「どうせ、こころが付きまとってんでしょ?」



クラス中の女の子の視線がこっちに集中してるのを感じる。
多分、同じ中学だったこたちだろう。

このふたりは、たしかに仲がよくみえる。
だったら、この子に彼女のフリを頼めば丸くおさまるはずなのに、どうしてあたしだったんだろう。



「匠、彼女できたんだからあたしを悪く言う女子をだまらせてよね」


「すぐに噂なんて立つから、心配すんな」



ポンポンっと頭を撫でる。

きっと、匠はみんなと距離が近いんだ。
あたしには全然そんな距離の近い男の子がいないから、ドキドキしちゃうけど、この子は慣れてるんだろうな。

ハーフっぽい顔立ちで、ふわふわのパーマがかかっていて、可愛くて、男の子が黙ってなさそう。

なんだろう。
何も感じる必要なんて、ないのに。

なぜだか、心に黒いものが残る感じがある。