「今度は俺のプレー見逃すなよ?」


「う、うん」



予選の決勝で上の空で匠のプレーを見逃したことを匠はむだ根に持っている。
まぁ、あたしもみれなかったことがショックだから、今回は目を見開いてでも見るつもりでいるけど。



「おー、なっちゃん!」



匠と話していると、開いたエレベーターから柊くんが出てくる。



「柊くん、明日頑張ってね」


「おう、サンキュー」


「しっかり俺の事リードしてくれよ」



ポンっと柊くんの肩に触れる。



「お前のことリードできるキャッチャーなんで俺くらいだろ」


「はは、頼りにしてるぜ」



匠から聞いたことがある。
匠は、球が早いものの荒削り。
でも、柊くんの手にかかればそんなのなんとでもなるって。
だから「ピッチャーである俺がすごいって持て囃されるけど、あれは全部柊がいたからなんだ」って言ってた。

2人でなければなしえなかったことだから。



「匠」



2人のことを微笑ましいと思っていたら、後ろから誰か知らない女の人の声がきこえる。



「.......え、お前なんでここにいんだ?」



振り向いた匠が目を丸くしてる。