「本当なの?」

彼女は頬杖をつきながら薄っすらと笑みを浮かべて真っ直ぐ私を見つめる。


『歩み寄ることも大切』
『ちゃんと話せば分かり合えるヤツもいる』


私は理沙ちゃんと中原君の言葉を心の中で反芻し、意を決して口を開いた。


「……自分で自分の性格は良いです、なんて言えないから分からないけど……性格は合う、合わないもあると思うから人それぞれだと思うし……。あと黒い噂なんて知らないし、それ自体が何かも分からないな……」


視線を逸らさないよう、信じてもらえるように目に力を込めてしっかりと彼女を見つめながら返した。

すると彼女はマスカラの付いた大きな目を薄っすらと細くさせ、私の目を見定めてるような視線を送る。

緊張でさっき食べたパンがリバースしそう……。


「でももし噂が本当だとしても、今の質問に『はい、そうです』って答えるバカな人はいないと思うけどね」

彼女が何も返してくれなくて心配になった私の口が勝手に動いた。