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……?あれ、まだ暗い……?しかもなんか身体中がチクチクする……
なんだか木の匂いがする。

そこでようやく、私は目を開けた。
「え……?」
目を開けると
そこに広がっていたのは
どこかの森の景色だった。

「……待って、私、今何をすべきなんだろう……」
月明かりの照らす夜の森。顔を上げると、木々の奥に古い洋館があるのが見えた。
……行くべきだよね。
私は腹をくくって、暗い夜の森を洋館に向かって歩き出した。
近くで見るとすごく大きくて、恐らく白金家よりも少し大きいだろう。

私は古い洋館の、黒くなった扉を叩く。
「ごめんください、誰かいらっしゃいますか?」
すると、はーい、という陽気な声が聞こえてきて、すぐに扉が開いた。その人はメイド服を着ていて、感じのいい20代前半ごろの女の人だった。
「あらまぁ、こんな夜更けにお1人ですか?」
「えぇ……道に迷ってしまったみたいで…」
「あらあら、それは大変ですね。」
「どうされました?」
今度は扉の奥から、若い男の人が出てきた。タキシード姿のその人は恐らく執事だろう。
「おやおや、迷子ですか?」
男の人が優しく微笑んで言った。
「あの……一晩だけ、泊めて頂きたいのですが…」
「少々お待ち下さい。ご主人様をお呼びしますので。」
「どうぞ、お上がりを。」
そうして私を部屋に上げると、先ほどの二人がこの屋敷の主であろう人、それとその家族を呼んできてくれた。
「おやおや、君かい?迷子というのは?」
綺麗な赤毛を揺らして、男の人が優しい口調で言う。
「夜の森は危ないわ。泊まっていきなさい。」
茶髪のショートカットの女性が言う。
「あ、ありがとうございます。」
するとメイドが赤毛の男性を示して言った。
「こちらは、この屋敷の主、私共のご主人様でございます。」
「初めまして。リーガン・シリアスです。よろしく頼むよ。」
「リーガン様は天才技術者なのですよ。」
「こら、やめないか。お客様が困ってしまうよ。」
「ふふっ、よろしくお願いします。」
今にもご主人様自慢を始めそうなメイドさんを、リーガンさんが優しく制する。
「えぇ!?そうですか……?では気を取り直して、こちらは、奥方様の……」
「セス・シリアスよ。宜しくね。」
「奥方様はお洋服のデザインと制作を趣味でやっていらっしゃるんです。」
「えぇ、趣味だし、たかがしれているけれどね。」
茶髪の女性……セスさんが言う。
「まぁ、洋服作りが趣味とは……凄いですね。」
ありがとう、とセスさんが苦笑する。
「こちらはご子息のエドガー・シリアス様です。」
執事の男の人が示した先には茶髪の男の子がいた。
「……よろしく。」
「よろしくお願いしますね。」
「で、こちらはご令嬢のアンカ・シリアス様です。」
「どうも、エドガーの妹のアンカです。宜しく。」
「えぇ、よろしくお願いします。」
アンカさんの近くに、さっきからずっとニコニコと私たちを見つめている金髪の男の子と女の子がいた。
「あの、この子達は……?」
「あぁ、その子達は双子の人形さ。」
いつの間にかリーガンさんが近くに来ていて、そう教えてくれた。
「に、人形?リーガンさんが作ったのですか?」
「その通り!お客様、お目が高いですわ!」
メイドさんが少し興奮気味に口を開いた。
『ネェネェ、アイル、私達ノ事ヲ言ッテイルノカナ?』
『ネェネェ、アイリ、キット僕達ノ事ヲ言ッテイルンダヨ!』
「!!?」
突然双子の人形が喋りだしたので、少し大袈裟なくらい驚いてしまう。
「ふふっ♪驚いたかしら?この子達はただの人形じゃ無いのよ?」
「そう、なんですか……」
セスさんが、笑顔で言う。
「えぇ!男の子の方がアイル、女の子の方がアイリよ。」
『私ハ、アイリ!奥方様ノ作ッタ服ト、メアリーガ淹レル紅茶ガ大好キ!!ソレト、楽シイ事モネ?』
『僕ハ、アイル!ジャックノ料理トイタズラガ大好キ!!』
ん?メアリー?ジャック?誰?
「あ、メアリーというのは私の事です!私はメアリー・ブライト。以後、お見知りおきを。」
「あら、そうでしたか!宜しくお願いします。」
私がそう言うと、メアリーさんは子供のように満足気な顔をした。
「ジャック、というのは私の事です。私はジャック・オリア。以後、お見知りおきを。」
そういって、ジャックさんは綺麗な姿勢で一礼し、私に微笑みかけた。
「宜しくお願いします。」
「あなたの事も教えて頂ける?」
アンカさんに促され、ようやく自分が自己紹介をしていない事に気がついた。
「そうですね。私は白金 莉央です。よろしくお願いします。」
「あぁ、宜しくね。」
「今夜は宴を開こうとしていたの。ご一緒にいかが?」
セスさんが笑顔でそう言い
『ソウダヨ!楽シクナリソウ!私、パーティハ大好キ!!』
『ナラ、パーティ、シヨウ!皆デ歓迎シヨウヨ!』
双子が楽しそうに言う。
「そうね…なら皆で……」
「「「「「「「「歓迎しよう……!!」」」」」」」」