どこにいくでもなく歩いた
健の温もりを求めて
ふと包まれた
優しくて暖かい
今のあたしには暖かすぎるぐらい
あたしを包んでくれているのは健だね
『明日香』
その声使うなんて反則だよ
「明日香、どこにもいかないで」
思ってもなかった言葉だった
その言葉を言うべき人物はあたしじゃない?
『本当に先輩とはなにもないんだ』
「……が……なぃ」
『……?』
「信じられるわけがないっ」
健の腕の力が強くなった
健は今どんな顔をしてるのかな
あたしは素直に直球に聞いた
「どうして神崎先輩と帰ってたの?」
『――前さ、聞いたことあるんだよ神崎先輩のこと」
「………。」
「神崎先輩が彼女持ちの男を好きになったときの話し。
先輩はさ、そいつに彼女いるってわかってて男に近づいたんだ、
《一緒に帰ろう》
って、帰るだけでいいからって言ったらしいけど男が断ったんだ
そしたら神崎先輩、彼女の方に手出したんだ」

