「真野、その……病気はいいのか。」

 これには素でカチンと来た。

「橘さんが心配することじゃありません。」

「心配するだろ!」

「大丈夫です。
 いつもの薬を飲んで来てます。」

 私は強気で返した。
 だって、今の橘さんに心配されたくない。

 見に来て良かった。
 インターフォンを押して反応がなければ寝ているということだろうから帰るつもりだった。

 でも実際はすぐに返答があったし、何より目の前の橘さんは体調がかなり悪そうだった。
 前の資料室の時よりずっと。

「待ってくれ。料理はいい。
 夕飯はもう食った。真野は?」

「えぇ。実は私も。」

 宮崎さん達と食べてしまった。

「では、食材は冷蔵庫に入れさせてもらってもいいですか?」

 短い髪をくしゃくしゃっとかいた橘さんは観念したように「任せる」と小さく言った。

「何か飲むか?って酒くらいしかないな。」

 慣れた様子で冷蔵庫を開けた橘さんに、やっと現実味が出てきて緊張する。
 スーツ以外の橘さんを見るのは初めてだ。

 スエットの上下を着た緩い格好をしている橘さんは固いイメージが少しだけ柔らかく感じる。

 私が持ってきた食材を手際よく冷蔵庫へしまってくれた。