「身を捧げるの?妬けちゃうなぁ。」

「馬鹿ね。
 真野さんの気持ちがないまま向こうが強引に手を出したら即刻アウトよ。
 そこは強気で。女は強気でなんぼよ。」

「それは元カノだからでしょ?」

 二人の息はぴったりで、不意に思いついた言葉が口から出た。

「もしかして上川さんの結婚相手って、宮崎さん?」

「まさか。やめてよ。」

 笑う上川さんが携帯を操作して私の方へ差し出した。
 そこには橘さんに負けず劣らずの強面の男性が写っていた。
 無骨な男らしい男の人。

「この人が婚約者よ。
 こういう人がタイプなの。」

 だから橘さんだったんだ。
 ブレないなぁ。

 人様のマンションの前で思い出し笑いをクスリとこぼした。
 こんな状況で笑える自分に驚く。

 あれもこれも全て宮崎さんと上川さんの手の内だったのかもしれない。

 寝不足と言われ心配させられて。
 人を入れるわけない。それが普通だから暗に様子だけ見て来てというのがよく分かった。

 だから私は軽い気持ちでインターフォンを押した。