「だから給湯室の彼女達は滑稽だよね。
 あんなことしても橘は真野さんしか見てないんだから。
 そのせいでつらい目に遭わせてしまったかもしれないけど。」

 そう言うと真野さんは返答に困ったような顔をして俯いてしまった。
 俺は言葉を重ねた。

「真野さんだけだ。
 橘をあんなに、周りが見えなくなるほどに盲目にさせて必死にさせるのは。」

 橘は仕事は真面目で面倒見はいいとは思う。
 けれど人付き合いはどちらかといえば冷めていて、こと、女性のことになると一段と冷めていた。

 それが、だ。

 しかし、どうやら真野さんはそうは思っていないようだ。

「そんなこと、ないと思います。」

「どうして?まだ気持ちが足りないって?」

「いえ、そうではなくて……。
 今までの彼女に子どもっぽいって理由で振られたって言ってました。」

 言いにくそうに言った真野さんの言葉に思わず目を丸くした。

「子どもっぽいだって?あの橘が?
 どっちかって言ったらオッサンだろ?」

 橘に到底似合わない『子どもっぽい』という単語にクククッと笑う。

「でも、、。」