こんな日は落ち着く場所がいいと思い、小料理屋にした。
 ゆっくり話せるように個室を事前に予約しておいた。

 お店に着くと出されたほうじ茶の入った湯のみを両手に握りしめて真野さんはポツリと呟いた。

「どうして彼女達は知っていたんでしょう。」

「何が?」

「私が……その、橘さんにアプローチされてるって。」

「何を今更。それは公然の秘密。」

「公然の……秘密?」

 不可解そうな顔をした真野さんにクスリと笑みをこぼして付け加えてあげた。

「周知の事実。」

「それってみんながみんな知ってるってことですか?」

「そりゃあんなに触れ回っていたら、ね。
 何かにつけて橘は真野が可愛いって言うし。」

「それはつまり、いつでも?」

「そう。どこでも。」

 顔を赤くする真野さんへ色々なことを指摘したい気持ちは抑えて考えを口にした。