「あ、、。」

「あぁ。真野さん。偶然だね。」

 偶然を装って待っていた真野さんに声をかけた。

 懇切丁寧な真野さんはおずおずと頭を下げた。

「会社では、ありがとうございました。」

「いや。大丈夫だって。
 でも………そうだね。
 お礼してくれるなら食事に付き合ってくれない?」

 真野さんは真面目くさった顔で言った。

「私に奢らせていただけるのなら。」

「ハハッ。律儀だよね。」

 真野さんも、橘も。

「了解。いいよ。
 この借りは前の食事の分?」

「いいえ。今朝、助けていただい分です。」

 だよね。
 もう一つの借りは別で返してもらわないと……ね。