微笑んで立っていたのは宮崎さんだった。

「だって宮崎さん。
 真野さんったら橘さんをたぶらかして資料室へ誘ったりするし。」

「橘さんに庇ってもらえるからって仕事をサボったりして。」

 橘さんをたぶらかした覚えはない。
 資料室に行ったのは仕事だ。

 その上、仕事をサボったってなんのことを言われているのか、全く分からなかった。
 まさか……昨日、休んだから?

 宮崎さんは穏やかな雰囲気を崩さないまま、けれど誰にも意見させない雰囲気も身に纏って告げた。

「橘が、こういう裏であれこれするのが嫌いなのは想像できるよね?
 嫌われたくなかったら変なことしない方がいいんじゃない?」

「それは……。」

 口ごもる彼女達に宮崎さんは付け加えた。

「橘は俺が見ててもウザいくらい真野さんに真っ直ぐだ。
 あんなのやめて俺にしなよ。」

 魅惑のウインクをする宮崎さんに彼女達は「宮崎さんったら軽いんだから」と笑っている。

「俺なら君達をベッドの上以外で泣かせたりしないよ。」

「ヤダ〜。宮崎さん。」

 キャーキャー言いながら彼女達は私の存在なんて無かったことにするみたいに去って行った。