遅い時間帯の店内は人もまばらだった。
 自分にこういう店が似合わないことは心得ているし、自分の無駄に幅を取る体のことも心得ている。

「俺にはここのカウンターは狭い。
 一つズレて座るか、テーブル席にしないか?」

 俺が真野の隣に座れば必然的に腕が触れてしまうだろう。
 俺はもう彼女に触れる勇気はどこにも残っていなかった。

「大丈夫です。今は薬を飲んでいるので。」

 目を伏せて力なく笑った真野に胸の奥が鷲掴みされたように痛くなった。

 薬を……。

 状況が読めないまま、俺は力なく真野の隣に、出来るだけ真野とは反対の方へ体を寄せて腰掛けた。
 かろうじて触れない真野との距離が余計につらく切ない気持ちにさせた。