何もかもを振り切るのように仕事をしていた遅い時間。
 真野からメールが届いた。

『お疲れ様です。
 まだお仕事中ですか?
 終わられたら会えませんか?
 何時になっても待っています。』

 嬉しいはずの言葉の羅列。
 それが今は重く心にのしかかる。

「橘さん、顔色悪いっすよ?
 今日は帰られた方が……。」

「ハハッ。健太に心配されるようじゃ俺も終わりだな。」

「そんな〜。」

 こんな時に限ってすぐに帰れるなんてな。
 いや、待たせない方がいいか。
 普段通り仕事をしていたら深夜になってしまう。

「悪い。言葉に甘えて帰らせてもらう。」

 気乗りしない体に鞭を打って指定された場所へと急いだ。

 チェーンのコーヒーショップ。
 真野はカウンターに座っていた。

「悪いな。待たせて。」

「いいえ。こちらもお呼び立てしてすみませんでした。」

 どこか地に足のつかない挨拶を交わす。