休憩室で俺は携帯の電源を入れては落としてを繰り返していた。

「何やってんすか?
 そんなことやってると充電、すぐなくなりますよ?」

 健太に指摘されなくても分かってる。
 携帯を見返さなくても一度見れば覚えられる単純な一文。

 その単純な一文が心に引っかかって、どうにも釈然としない。

「なぁ。気持ちを伝えた時に女が「ありがとう」って言うのはどういう時だ?」

「またですか…。」

 真野だと口に出さなくても健太はそうだと分かったようだ。

「その時のニュアンスとかにもよりますけど。」

「早く嫌いになってくれと言われた。」

「はーぁ。橘さん。
 それ、終わってるやつ。」

 健太のあけすけな言い方に脇腹へグーパンチをお見舞いする。

「イッ…。橘さん…。体格差、気にして。
 橘さんのパンチ重いんだから。」

「お前が心ない台詞を吐くからいけない。」

 脇腹をさすりながら口を尖らせる健太はめげずに意見してきた。
 この度胸を仕事で見せてくれよ。と、文句を言いたくなる。