「橘さん…。」

 突然現れた橘さんは宮崎さんの肩にもたれるように腕を回して、何やら軽くパンチをしている。

「宮崎の背が高くて目立つのが今日ほど役だったことないわ。
 真野、お疲れ。」

「お疲れ様です。」

 会釈をして顔を上げると破顔した顔の橘さんと目が合った。

 わぁ。
 久しぶりの気がしてしまう。
 今朝も電話で話したし、何より会社でも見かけているのに。

 宮崎さんに絡む橘さんこそ背が高くて、戯れ合う2人はなんだか絵になっている。

「真野、遅いな。
 今からでも何か食べれる?」

 私が返事をする前に宮崎さんが楽しそうに報告した。

「ざんねーん。俺と食事に行きました〜。
 一足遅かったな。」

 一瞬、表情が曇った橘さんに、いや、別に……って言い訳したくなる心を押し留めた。

 だってなんの言い訳?

「分かった。じゃ、帰りは俺が送る。
 宮崎は真っ直ぐ帰れ。」

「なんだよ。人さらい。」

「うるせぇ。」

「借り、1つだからな。」

 そう言って煩わしそうに橘さんの腕を振り払った宮崎さんはどこかに歩いて行ってしまった。