「悪かったな。
 それなのに無理矢理キスして。
 話すきっかけもなくて、どうアプローチしていいか分からなかった暴走の成れの果てだ。
 許してくれ。」

 暴走したという自覚はあったみたいだ。
 けれど…。

 いいですよ、なんて言えない。
 突然で、キスされた記憶も定かじゃないけどだからっていいわけじゃない。

「それでも」と彼は付け加えた。

「真野が好きだ。」

 真っ直ぐ見つめる彼から目が離せなくて否が応でも鼓動は速まっていく。

 フッと視線を外した彼が立ち上った。

「出よう。送る。」

 彼の後に続いて私も席を立った。

 ものの数分で彼はステーキを食べてしまった。
 男らしい豪快な食べ方。
 それでいて好感の持てる綺麗な食べ方。

 私は今日1日で彼がモテる理由をなんとなく理解した。