「その時に俺が言った言葉で泣いてた。
 泣き顔が、ツボった。」

 フッと不敵に笑われて文句を口にした。

「泣き顔がって。いじめっ子ですか?」

 ううん。
 橘さんにいじめられたことはない。

「ばーか。悲しい方で流させるかよ。
 って言えた義理じゃねぇな。
 俺、泣かせてばかりだ。」

 手が伸びてそっと頬に触れそうになって引っ込められた。

「悪い。
 言ったそばから触れそうになったわ。」

 触れられていないのに、じわじわ頬が熱くなる。

「俺、しくじったかもな。」

「何をですか。」

「いや…。
 真野が可愛いから触りたくなる。」

「なっ…。」

 片手で覆った顔の目だけこちらに向けた彼と目があって余計に顔が熱くなって俯いた。