店内はまばゆい光が散りばめられたような輝きを放っていて、目がくらみそうだ。
 目を瞬かせて、私は橘さんに手を引かれるままショーケースの前へ歩み寄った。

「どんなのがいい?」

「いえ、だって橘さん!」

 小さく訴えてみても橘さんは微笑むばかり。

 店員さんが近づいて来て私の顔はますます引きつってしまう。
 にこやかな笑顔で勧めてくれるのはゼロが何個も何個もついている。

「婚約指輪をお探しですか?」

「えぇ。まぁ。」

「でしたら、可愛らしいお客様にお勧めの指輪がございます。」

 店員さんが奥へ商品を取りに行く隙に私は橘さんへ訴えた。

「橘さん!婚約指輪って。」

「見ておくのに遅いってことはないだろ?」

 遅い、早いの問題じゃなくて!

「真野のこと「可愛い」って。」

 そう言って頬を緩ませる橘さんに、お世辞という言葉も忘れずに辞書に載せておいてください!と声を大にして言いたくなった。

 店員さんはまたゼロが何個もついた指輪を持ってきてくれて私はクラクラしながら為すがままに指輪を数個、指にはめたり、取ったりして過ごした。

「またのご来店お待ちしております。」

 丁寧にお辞儀をしてくれる店員さんに申し訳なくて私は胃が痛くなる思いだった。