「真野。なんだ。どうした?」

 近づくや否や抱き竦められて面食らった。

「あー。やばい。
 私服の真野がすげー可愛い。」

 いえ、それはそっくりそのままお返ししたいです。
 倍じゃ足りないくらい。
 3倍にも10倍にもして返したい。

 しかもここは往来の真ん中。
 みんな見てる、見てる、見てるってば!

 私はグイッと橘さんを押し戻すと橘さんは甘い顔をしておでこをコツンと軽く重ねた。

「恥ずかしがりだなぁ。」

 そう悪戯っぽく笑って私の手を取って歩き始めた。
 この胸の苦しさは対人恐怖症じゃないって分かったけど、分かったからって平気になるわけじゃ………。

 取られた手は自然に絡められて、指と指の間に橘さんの指が絡んでブワッと顔が赤くなるのを感じた。

「あんまり恥ずかしがられると、こっちも照れるわ。」

 口元に手を当てた橘さんは少しだけ耳を赤くさせて照れたように言う。

「ま、それも可愛いからいいんだけど。」

 なんて、元も子もないようなことを言ってそのまま手を繋いでお店まで歩いた。