初めて2人で過ごす週末は初めてのことばかりだった。
 橘さんと買い物をするのは初めてで、そういえば私服姿を見るのも初めてだ。

 そう気づいたのは、もう手遅れになってからで……。

 一旦、帰った私は待ち合わせた場所へと急いでいた。

 あ、もう来てる!

 急いで駆け寄ろうとした脚を止めた。
 ガタイのいい体型に似合っているざっくりとしたニット。
 ほどよくフィットしているパンツ。

 長い脚を軽く組み、腕時計をチラッと確認した橘さんはものすごく絵になっていた。

 精悍な顔立ちとガッシリとした体つきはどうしても目立つみたいで道行く人が振り返っている。

「あの短髪の人、かっこよくない?
 彼女待ちかな?」

「クールな感じだね〜。
 きっと彼女も美人なんじゃない?」

 そんな噂話をする声が聞こえて、無邪気に駆け寄ることなんて出来ない。

 せめてもう少し可愛い格好……。
 ううん。そんな付け焼き刃じゃとても…。

 後退りをして、逃げ出したい気持ちでいると離れた場所に居たはずなのに、バッチリと目が……今、合ったような。

 颯爽と歩み寄ってくる橘さんに居た堪れなくて俯いて立ち尽くすことしか出来ない。