「そ、それは、その。
 だって橘さんだって「健太さん」って呼ぶの嫌がるじゃないですか。」

「……ッ。それは……それは、真野の気持ちがどこにあるのか分からなかったから。
 ちゃんと俺へ向いているのが分かれば妬いたりしない。
 …………多分。」

 そっぽを向いたバツの悪そうな橘さんが小さな子どもみたいで可愛く思えてしまった。
 そんなこと口にすればますます拗ねちゃうから言えないけど。

 永島さんはわざわざ私に自分と橘さんの関係性を話す為に食事へ誘ってくれた。
 だから永島さんとのことはもう何日も前に誤解していたことは分かっていた。

 それでも橘さんは改めて私に話してくれた。

「永島から聞いたと思うけど。
 永島の旦那が俺と同期で。
 永島のこともよく知ってたし、旦那の方が俺のこと俊介って呼ぶから、同じように呼んでただけで。」

「はい。そう伺いました。」

「喧嘩するほど仲がいいってやつで、あいつらよく喧嘩するから、その相談というか、愚痴を聞いてただけで、その、真野が心配するようなことは何もないんだ。」

 永島さんからも同じことを言われた。
 だから私の勘違いだと。

 けれど………。