週末が来るとなんとなく緊張した。
 何を話されるんだろうというのと、何を話さなきゃいけないんだろうというプレッシャーを感じて。

 大切なことを有耶無耶にしたくないという橘さんの男気は素敵だ。

 けれど今の何もハッキリさせない関係の方が気持ちも軽くていいような気がしてしまっていた。

 金曜日の夜。
 いつものごとく遅めの帰宅をした橘さんが開口一番で「いつ話そうか」と言った。

「ハハッ。真野は話したくなさそうだな。」

 肩を揺らした私にそう口にする橘さんがそっとその肩を抱いた。

 そのまま顔を近づけた橘さんは襟ぐりの隙間から鎖骨あたりに優しくキスをした。
 突然のこと過ぎて「ひゃっ」と変な声を上げてしまった。

「た、橘さん?」

 よろめく体はいとも簡単に橘さんに捕らえられて抱き竦められた。

 この数日、添い寝までしても全くこういう雰囲気にはならなくて、すっかり安心していたというか…………。

「ちょっとフライングだった?
 けど、好きな女とずっと一緒にいて手を出さずに我慢してた俺のこと少しは労って欲しいわ。」

 色気を隠そうともしない橘さんに、大人の男性だってことをまざまざと見せつけられた気がした。
 忘れていたわけじゃないのに、ドギマギしてしまう。

「え、っと、頑張りました、ね?」

「ハハッ。そう。頑張ったよ。
 真野に、嫌われたくないからね。」

 橘さんの言葉は私の胸を締め付けて私は回されている腕にギュッとしがみついた。