平日は今週だけだからと押し切られて橘さんのマンションへ毎日お邪魔することになった。

 常に遅い帰宅の橘さんは食事は済ませているから夕食を共にするわけでもなく、ただ少し話をして一緒に眠るだけ。

 律儀な橘さんは私とはまだ付き合っていないらしかった。
 話さなきゃいけないこと、聞きたいことを聞いてから返事が欲しいと言われた。

 その割には色々と順序がおかしいような……。

 付き合ってないのに、半同棲みたいだし。

 泊まるようになった2回目の時に気になったことがあったので聞いてみた。

「毎日、会うのは私の為ですか?」

 夜は大抵、心が疲れていて、橘さんが何も聞かずに与えてくれるぬくもりに癒される気分だった。

 私が、触れていたかった。
 橘さんの穏やかなぬくもりに。

「いや。俺の為だけど?」

 そう言いつつ「触れたいならどうぞ」みたいなことを言ってくれるし、朝は少しよそよそしくなる私に合わせて絶妙な距離から踏み込んで来ないでいてくれる。