目が覚めると暖かいぬくもりに顔をうずめて、ハッとする。

 うわ……橘さん家に泊まって、しかも一緒のベッド………。

 早く薬を飲まなきゃと焦る心とは裏腹に寝ぼけた橘さんが私を抱き枕代わりに抱き寄せて離してくれない。

 穏やかなぬくもりは心地よくて、薬が切れているはずなのに、ぬくもりの正体である橘さんを怖いとは思わなかった。

 いつも身長差があって遠くにある顔がすぐ近くにある。
 目を閉じた橘さんの顔は精悍な顔つきが柔らかく見えた。

 そっと頬に手を触れさせると「ん…」と少し顔をしかめさせて、それから頬ずりをするように触れた手に頬を寄せた。

「ん……真野?あぁ。そうか。」

「ごめんなさい。起こしました?」

「いや、平気。
 けどもう少し、このまま……。」

 私の手を握った橘さんは手の平に唇を寄せて、それから再び眠ったみたいだ。

 心臓が不整脈みたいに波打って、やっぱり薬を飲もうと思い直した。
 握られた手は橘さんが眠ると緩んでいって、それを解いてからベッドから這い出した。