「真野とは、さ。
 有耶無耶にしないでちゃんと付き合いたいと思ってる。
 だから、真野の気持ちが聞きたい。」

「私、の?」

「あぁ。
 その、俺のことをどう思ってるのかっていうか、、本当に好きなのかってこと。」

 言いづらそうに言葉に詰まりながら言う橘さんにこっちの方が恥ずかしくなって、顔が熱くなって、何と言っていいのか分からない。

「俺のこと好きなのか?って、そうなっちゃえよって期待も込めて言っただけで、実際そうなのかもって知るとどうしてか、、。
 だって俺のことを嫌いだったろ?」

 苦笑混じりに言った橘さんの一言に首を振りながら訂正した。

「違っ。恐くて苦手だっただけで。」

「それ、嫌いとは違うの?」

 優しく質問されて、それが余計に胸に刺さる。

「嫌いって、言えるほど橘さんのこと知らなかったっていうのが正しいと思います。
 本当、表面でしか橘さんを見ていなくて。」

 知れば知るほど自分が見ていた世界はちっぽけだったって思った。
 橘さんのことも、それに橘さんとのことを通して接することの増えた人達のことも。

「それで、知ってどうだった?」

 期待の眼差しを向けられている気がして、些か緊張する。