「キス、していい?」

 甘い色気漂う声がして「ん……」と寝ぼけながら薄目を開けた。
 目尻を下げてこちらを見つめる瞳と目が合って微笑まれた。
 優しく触れる指先は頬を撫でていて、なんだかくすぐったい。

「橘さん……おかえりなさい。」

「あぁ。ただいま。」

 ふにゃっと崩れた顔が近づいて、そっと唇に触れた。
 優しい温もりは私を抱き寄せた。

「真野に「おかえり」って言われるのやばい。」

「ん?」

「いや、こっちの話。」

 大きな体は私をすっぽりと包み込んだ。

「橘さん、顔、ふにゃふにゃ。」

「は?」

「恐いって思ってたのに、今の顔、すごく好き、です。」

 抱き寄せられていた腕に力が入って、ギューッと抱きしめられた。

「もうずっと寝ぼけてて欲しいわ。
 寝ぼけてる真野、可愛い過ぎる。」