俺はどちらかと言えば面倒くさがりで、特に女は面倒だって思ってた。
 男といた方が気楽で仕事も忙しいし、自分本位で女のことは二の次だった。

「もっと紳士だって思ってた」とか言われれば言われるほど面倒で、こんなに面倒なら別に恋人なんていなくてもいいと思っていたくらいだ。

 それなのに、真野は何かが違う。
 真野の存在は俺の柔らかな部分に触れて、つかんで離さない。

 真野が笑ってくれるなら、その為に俺は何でもするし、何でも捧げてしまうだろう。

 現に今、仕事が終わって脇目も振らず電車に飛び乗っている。

 あんなメールで真野がマンションにいるかなんて分からないのに確認する手間も惜しいくらいに……いや、確認したくないんだろうな。いるってギリギリまで信じていたいというか。

 自分の踏み込んで欲しくない領域に真野はどうしてか居て欲しいとさえ思う。

 自分の帰りを待つ彼女、なんてどんなホラーだよって思っていた少し前までの自分が今の俺を見たらどう思うだろう。

 なんでこんなに必死なんだよって鼻先で笑いたいのに、笑い飛ばせないくらい真野に、、、会いたかった。

 電車に揺られる時間も惜しい。
 やっと駅に着くと階段を駆け下りて改札を出た。
 はやる気持ちは歩く速度を速めさせた。