緊張してるのに橘さんの温もりにうとうとする私に優しくて穏やかな声が聞こえた気がした。

「離れがたいな。このまま俺ん家に来ない?
 ……なんてな。無理だよな。」


 目を覚ますと私はベッドで寝ていた。
 まどろみの中で優しい温もり……。

 ハッとして飛び起きて周りを確認する。
 ドッドッドッと心臓が急激に動いて緊張が高まっていく。

 見覚えのある内装に家具。
 自分の、部屋だ。

 枕元に何か置いてあることに気づいて手に取った。
 それは1錠の薬と紙。

『ほぼ寝てたから悪いと思ったけどアパートまで運んだ。
 俺にしがみつく真野は可愛い過ぎる。
 離れがたいがさすがに帰る。
  橘俊介』

 その下に、置かれていた薬についての説明があった。

『真野が寝ぼけつつ自分で薬を出して俺に渡してくれた。
 信頼されてる感じがして泣けそう、というより泣けたわ。』

 高まっていた緊張は緩やかに解けていってトクトクと温かいものが広がった。
 橘さんが涙ぐむところ見てみたかったな。