「真野さん?」

 呼ばれて顔を上げるとホッと安堵した表情の人と目が合った。

「良かった。泣いてるのかと思った。」

 安堵の表情を浮かべていたのは健太さんだった。

「健太さん……。」

 私の呟きに目を丸くした健太さんは「俺、橘さんにど突かれそう」とこぼした。

 橘さんに懐いている子犬のような健太さんを思い返して目を細めた。

「飲みに行かない?」

 健太さんに誘われて迷わず頷いた。
 人が怖いよりも何よりも今日は1人でいたくなかった。