「真野?聞いてるか?」

 覗き込まれて仰け反った。
 自分で近づいたくせに思った以上に近かった距離にドギマギしてよく分からないことを口にした。

「え、えっと。なんでしたっけ?
 薬の、飲み合わせ?
 そういえば副作用とか最初のうちはすごく心配して調べてたんですけどね。」

 私は鞄から携帯を取り出して、いつも飲む薬をネットで検索してみた。
 何気ない行動だった。

 ほら、飲み合わせ平気ですよって、橘さんにただ言いたいだけだった。
 お酒と飲んでいいなんて出るわけもないのに。

 だから画面に並ぶ文字を見て、一瞬なんのことか理解できなかった。

『プラセボ:有効成分の含まない薬。偽薬。』