「あの、勘違いしないようにっていうのは。」

「真野が俺への好意でこういう行動を取ってるわけじゃないってことくらい分かる。
 いいよ。これくらい。惚れた弱みだ。
 役得って思っておく。」

 私はひどいなぁ。
 橘さんが言う通り、橘さんの気持ちに甘えてる。

 眠れない橘さんを心配して来たはずが、これでは立場が逆転してしまっている。

「本当に泊まってくのか?
 今の真野を帰すのも心配だから……だからって泊めていいのか……。
 でも………。」

 言葉を濁す橘さんに私は慌てて口を挟んだ。

「私、宮崎さんに頼まれたんです。
 橘さんが眠れるまで側にいてやってって。」

「俺は大丈夫だ。
 それより真野は不安定になるほど参ってるんだろ?
 それは俺の、、せいじゃないのか。」

「橘さんのせいでは……。
 薬を飲んで、その。」

 橘さんのせいじゃない。
 それは違う。
 違うのに、違うとは言い切れない自分がいた。

「真野は真面目なくせに酒で薬を飲んだりするからな。
 飲み合わせとか気にしろよ。
 って、そこまで追い詰めてたのは俺か。」

 頭をかく橘さんの横顔をぼんやり眺める。
 そうだ。この顔。
 最近、この顔を見てなかった。