この王宮に勤めている人間でアディが話をするのは、ルースだけだ。スーキーは、こまごまとアディの身の回りの世話をするのに王宮の使用人たちと話をする機会はあるが、誰に聞いてもアクトンという名前は知らないと言われていた。

 ルースは、本を開いていた手をとめてしばらく考え込んだ後で言った。

「お知り合いですか?」

「友人の兄なのです。私と同じロザーナの出身なのですけれど、この王宮に勤めていると聞いています。けれど、まだこちらに来てからお会いしたことがなくて」

「友人……そのご友人は、あなたと仲がよろしいのですか?」

 アディは、窓の外を見た。彼の住む町は、あの空の向こうだ。